2018年7月17日火曜日

PRTGメディカルIT監視【DICOM-PACS】

PRTGに標準搭載されている【eHealthセンサー】は、医療現場で広く活用されているアプリケーション・サービスの監視を行うものです。
この記事では、【eHealthセンサー】のうち、医用画像システム(DICOM-PACS)を監視する3つのセンサーの使い方を紹介いたします。
※PACS : Picture Archiving and Communication Systems の略

1. DICOM監視センサー概要

DICOMとは、医用画像の通信プロトコルとフォーマットを規定した標準規格であり、Digital Imaging and COmmunications in Medicine を略したものです。1980年代に登場以来、医用画像の通信・保管におけるグローバルなデファクトスタンダードとして普及しています。
このような規格が普及する前は、例えばCT撮影画像はCT装置の専用ワークステーションでしか見ることができませんでした。異なるメーカーの画像撮影装置(モダリティと呼びます)で撮影した画像を、1つの画像ビュワー上で取得・表示したくても、画像フォーマットや通信プロトコルがすべて異なるため、容易ではありませんでした。
DICOM規格が普及した今では、DICOM対応機器(モダリティ、画像サーバ、画像ビュワーなど)は、簡単にネットワーク上で接続し、異なるメーカーの機器同士でもPACSを構成することが出来るようになりました。
【eHealthセンサー】のDICOM監視センサーは、PACS構成機器に対し、DICOM通信サービスが正常に機能しているかを監視するもので、従来のネットワーク監視製品には見られなかったものです。

2.DICOM 監視センサーの使い方

では、個々のセンサーについて、使い方を紹介していきます。
DICOM監視センサーには、
  1. C-ECHOセンサー
  2. クエリーリトリーブセンサー
  3. 帯域幅センサー
の3つがあり、全てPRTGの標準機能として搭載されています。


2-1. ご利用時に必要な共通知識

DICOM監視センサーを、監視対象と接続するには、DICOM規格特有の共通した手順が必要です。DICOMプロトコルで通信を行う機器同士は、相互に必要な接続情報を登録する必要があります。
具体的には、
  AEタイトル、IPアドレス、使用ポート番号
の3つの情報です。接続する際は、相互にこの情報を交換し、それぞれの機器に設定を行います。AEタイトルとは、アプリケーション・エンティティ・タイトルの略で、DICOM通信における、通信相手の識別に用いるものです。
PRTGだけでなく、相手機器側にも設定が必要です。

2-2. センサーとサービスクラスの関係

医用画像を扱う上で、「格納」「検索」「印刷」など、いくつかの用途がありますが、DICOM規格では、これらをサービスクラスとして定義しています。今回紹介する3つのセンサーと、サービスクラスの関連は、以下のようになっています。
 Verification Service Class  (通信時のチェック機能)   C-ECHOセンサー
 Query / Retrieve Service Class  (画像検索機能)    クエリーリトリーブセンサー
 Storage Service Class (画像転送機能)         Band Widthセンサー
PRTGのDICOM監視センサーを使って何を監視するかを最初に決定するわけですが、一般的には以下のような区分になるでしょう。
 C-ECHOセンサー         モダリティを含む全機器
 クエリーリトリーブセンサー      DICOM画像サーバ
 帯域幅センサー                      DICOM画像サーバ、画像端末
C-ECHOは、DICOMとしての通信確立を確認するもので、C-ECHOセンサーでPACS全機器の可用性確認が行えます。ネットワークの疎通をpingで確認したとしても、C-ECHOによるチェックが正常に行えなければ、DICOMの通信は行えない状態です。
クエリーリトリーブセンサーは、画像検索の応答性を監視するもので、画像が保管されているDICOM画像サーバに対して用います。
帯域幅センサーは、PRTG側にセットした監視用のDICOM画像を、監視対象の機器に送信し、画像転送時のスループットを測るもので、やはりDICOM画像サーバが主な監視対象になりますが、画像端末に対しても同じ目的で用いることが出来ます。

2-3. C-ECHOセンサー

では、DICOM機器同士の接続確認を行うC-ECHOセンサーの使い方を説明します。
PRTG上で、監視対象となるDICOM機器がデバイス登録されている前提で説明いたします。
対象デバイス上で、「センサー追加」をクリックし、必要情報を入力していきますが、ポイントとなるのは、2-1で説明した3つの情報です。まずPRTG側の設定情報を決めておく必要があり、AEタイトルは任意に決められますので、例えばPRTG_DICOM_SENSORとします。このAEタイトルは、センサー毎に決める必要はなく、PRTGとして1つ決めればOKです。
これを、「呼び出すアプリケーションエンティティタイトル」の欄に設定します。

「呼び出されたアプリケーションエンティティ」と「ポート」番号は、接続相手の機器側から聞いた情報を設定します。あとは初期設定のままでOKです。
スキャン間隔を設定し、保存すれば、C-ECHOによる監視が開始されます。

監視周期毎に、PRTGが相手機器に対して、DICOMのC-ECHOサービスリクエストを通知し、その応答確認を行います。
いかがでしょう、迷うところはないくらい、簡単に監視を始めることが出来ました。

2-4. クエリーリトリーブセンサー

続いて、クエリーリトリーブセンサーの使い方を説明します。
基本的に、監視対象は画像を保存・サービスするDICOM画像サーバとなります。
設定方法はC-ECHOセンサーと大きく変わらず、「AEタイトル」や「ポート」番号は、C-ECHOと同様に設定してください。
クエリーリトリーブセンサーに特有な設定項目として、「C-FINDレベル」というものがあります。これは、画像検索を行うときに、
 スタディレベル  撮影(検査)単位
 シリーズレベル  一連の撮影の中の、シリーズ単位
 患者レベル    患者単位
のいずれで検索を行うか、という意味です。「検索キー」は、それぞれの場合に指定するキーを意味し、*はワイルドカードとして用います。
ここでは深く考えず、デフォルトのまま(スタディレベル 検索キー *)にしましょう。


あとは、保存すれば、監視が始まります。このセンサーは、画像検索の応答性を監視しており、対象機器が、PRTGからのC-FINDリクエストに対して、正常に応答しているかを確認できます。




2-5. 帯域幅センサー

では、最後に帯域幅センサーの使い方を説明します。
これも主な監視対象は、DICOM画像サーバとなります。
このセンサーは、対象機器に対して、実際にDICOM画像を送信し、そのスループットを測定しますので、監視に用いるDICOM画像を用意して、PRTGにセットする必要があります。監視に用いる画像ですから、小さなサイズが好ましく、また画像サーバに送信しても差し支えない画像である必要があります。
したがって、PACS構築時や定期点検時に使用され、画像サーバ内に保存されているテスト画像を提供してもらい、それを用いるのが最も良い方法です。

設定画面に、「ファイルパス」というフィールドがあります。PRTGに画像格納用フォルダを作成し、そのパスを設定します。ここでは、C:\dicom と設定しています。
その他は、上記の2つのセンサーと同じです。保存すると、監視が始まります。
設定した監視用画像ファイルを、DICOMのC-STOREサービスで監視対象機器に送信し、そのスループットを監視します。
なお、実際の撮影現場では、DICOM画像サーバに常時監視用画像を送信されては困る、というケースも多いでしょうし、監視用とはいえ、通信履歴がDICOM画像サーバに残るのはNGというケースもあるでしょうから、このセンサーのご利用には、注意が必要です。

3.まとめ

PRTGのeHealthセンサーのうち、DICOM-PACSの監視を行う3つのDICOM監視センサーの使い方について説明いたしました。
通常のネットワーク監視だけでは、「pingは通るのに画像が来ない」といった状況を解決するには、様々な局面での調査が必要でした。このPRTG eHealthセンサーを利用すれば、DICOM-PACSとしての健全性を一目で監視することが出来ますので、何か不具合が発生したときの切り分けは非常に容易です。医療現場のお客様が安心して検査業務を行っていただくための環境づくりにお役立ていただけるのではないかと考えます。
ご紹介したセンサーはすべてPRTGに標準実装されており、トライアル版でお試しいただくことも可能ですので、ダウンロードページから、是非一度お試しください。


また、以下の紹介ページも、あわせてご覧ください。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。